・・・どの作品でも、オオドゥウは寄るべない一人の貧困な少女がこの世の荒波を凌いで、俗っぽい女の立身とはちがう人間らしさの満ちた生活を求めて、健気にたたかってゆく姿を描いているのであるが、最近出版された「マリイの仕事場」は、オオドゥウの人生に対する・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
・・・ 確かに呼吸が止まり冷たい、堅い骸となって横わっている自分の前では、もう一人のこれも自分には違いない自分が、厭な辛いことを健気にも最後まで忍び、雄々しい生涯を終った自らを、感歎し、賞揚し追慕して、潸然と涙を流している……。 こんな、・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・行こうと欲する現代の社会性ひろい、情感ゆたかに努力的な婦人が、日本の時代の空気の中で、周囲の重り、自身の内部に在る重り、愛する良人の内にある重りと、どのように交錯し合い、痛みつつ、まともに成長しようと健気にたたかっているか、その記録が「くれ・・・ 宮本百合子 「はるかな道」
・・・というものは生むもの、創造するものである」という健気な自覚を内容づける母としての愛の高まり、拡大、愛の驚くべき賢こさが働くならば、去った息子との間に新しい精神的接近の試みがされるであろうこと等が、全くとりおとされているのは、非常に惜しいと思・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・そして、決定的にその女のひとの日々はそのことから変ってしまうのである。健気に立派にのこされた子を守り育て終おせたとしても、その間にひそかにその女のひとの頬を流れおちた涙は、そのひとの心に痕をのこさないということはない。 この間、母子寮に・・・ 宮本百合子 「若い母親」
・・・辛いが健気なそれらの娘たちは、夕飯をたべる間もなくやって来る。眠たい頭、つかれた体を精一杯にひき立てて勉強する。気遣われるのは、彼女たちの生活を衛生的に助けてやりたい点であると語られていた。 それらの健気な娘さんたちが、そういう努力をと・・・ 宮本百合子 「若い娘の倫理」
・・・女は、ある場合それに対して本能的に反撥を感じながら、組織内の規律という言葉で表現されたそういう男の強制を、自主的に判断する能力を十分持たず、男に服従するのではなく、その運動に献身するのだという憐れに健気な決心で、この歴史的な波濤に身を委せた・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫