・・・ 人玉を見たという人にその光り物の大きさを聞いてみても視角でいくらぐらいという人はきわめてまれである。風船玉ぐらいだったとか、電球の大きさだったとかいうのが普通である。言う人の心持ちではやはりだいたいその目的物の距離を無意識に仮定してい・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ これに聯関して、やはり土佐で古老から聞いたことであるが、暴風の風力が最も劇烈な場合には空中を光り物が飛行する、それを「ひだつ」と名づけるという話であった。これも何かの錯覚であるかどうか信用の出来る資料がないから不明である。しかし自分の・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・ そんなウジウジした様子を見るにつけて御龍は自分の体の中に心の中に住んで居る光り物を可愛がった。 まだ十六のかおにはもう男と云うものを知りぬいた女の様なさめたととのった影がさして居た。 親達は、お龍を自分の娘だと思って見るのには・・・ 宮本百合子 「お女郎蜘蛛」
出典:青空文庫