・・・又公定賃金では製本もなかなか出来ない。どうしても作って行こうとすると、高い本しか出来ないようになっているのです。こういう文化的のことは、政治とはちょっと関係がないようなことであるけれど、はっきり、いまの社会の経済問題、政治の問題というものと・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・あらゆる形で大衆課税がとりたてられ、たとえ所得税の税率がいくらか引き下げられたとしても、汽車賃の二倍半までの増額、公定価格の七割ほどの引上げ、通信料の四倍、煙草の二割から八割の値上げは、あらゆる家計を破綻させている。とくに本年度の悪質大衆課・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・これも原因の一つである。公定価格がきまった途端に品物は消滅してしまった。これも原因の一つを示している。 あれこれの理由で野菜が消え去ったとなって、市民のそれに対する対策はどんな方法で行われているかというと、やはり実に個人的にやられている・・・ 宮本百合子 「主婦意識の転換」
・・・生活必需品の値上げについて賃上げ要求をして七百円から千五百円になり、千八百円ベースの今日、物価はぐっと高くなり公定価も上って、とても千八百円ベースではやって行けなくなっている。つつましく暮して四人家族で五千六百円ばかりかかる現実となった。大・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・たとえば公定価格で魚の百匁は標準にされているが、魚屋は苦笑して曰く「さかなの肝腎な新しい古いはどうなるんだろうね」と。私たちが魚を一つ買うのにもこの頃はこういう微妙なかねあいのところを通っているということに、もう少し深く考えられてかかること・・・ 宮本百合子 「龍田丸の中毒事件」
・・・タバコがあがる。公定価格のすべてがあがる。物価の一一〇倍にたいして、労働賃銀六〇倍のあがりでは誰の暮しも追いつきかね、タケノコ生活はタマネギとなって、もうしんまではいでしまった有様でいる。 闇という真暗なことばが子供の口からさえ洩れるよ・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・東京は今玉子が百匁で三十七銭です。公定価格です。真黒いひよっこがかえったそうです。真黒な小さい黒ん坊のようなヒヨコは可笑しくて可愛いそうです。 寒気のきびしい間、どうか益々体に気をつけて下さい。〔一九四〇年一月〕・・・ 宮本百合子 「二人の弟たちへのたより」
・・・国鉄の非常識な値上、公定価格の全般的吊上げが発表されている。今日、疎開している人口は、どのくらいあるか、疎開した学生の数は何人あるだろうか。疎開した勤人、疎開している学生は、都会の住居難から、たいていは遠距離を通勤、通学している。その人達の・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫