・・・また軽井沢などへ夏季の出店をする。いやどこも不景気で、大したほまちにはならないそうだけれど、差引一ぱいに行けば、家族が、一夏避暑をする儲けがある。梅水は富士の裾野――御殿場へ出張した。 そこへ、お誓が手伝いに出向いたと聞いて、がっかりし・・・ 泉鏡花 「燈明之巻」
・・・資本だって何だって、皆佃の方から廻してもらってやってるんだもの、私たちはいわば佃の出店を預ってるようなものさ」「そりゃどうだか知らねえが、何しろ新さんはお光さんてえいいお上さんを持って……ねえ、こいつは金で買われねえ果報ださ」「おや・・・ 小栗風葉 「深川女房」
・・・ 級長なんかというスマした優等生が、先生の小さい出店みたいなことをするのではない。級全体が選挙して、文化委員、衛生委員、学務委員というものを何人かずつきめる。 その委員たちが、みんなといろいろ相談し、学校の湯呑場、手洗場が清潔かどう・・・ 宮本百合子 「従妹への手紙」
・・・ 六日の日は、お昼を竹葉の本店へお伴して、座敷が大変お気に入り、今日七日はおひる父と三人で、銀座の星ヶ丘茶寮の出店。かえりにずっと上落合の家へおいでになり、ねころがったり起きたりよもやまのお話ですっかりくつろがれました。夕飯を壺井さん[・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫