・・・ウイリイは仕方なしに、剣をぬいて、馬の首を切り落しました。そしてその首をしっぽのそばにおいて、三べんお祈りをしますと、今まで馬の死骸だと思ったのが、ふいに気高い若い王子になりました。それは王女のお兄さまでした。王子は今まで魔法にかかって、永・・・ 鈴木三重吉 「黄金鳥」
・・・そのうちに肉屋はほうちょうをとぎおえて、刃先をためすために、そばの大きな肉のはしの、ざらざらになったところを、少しばかり切り落しました。そして、「ほら。」と言って、やせ犬になげてやりました。すると犬は、それが地びたへおちないうちに、ぴょ・・・ 鈴木三重吉 「やどなし犬」
・・・る者もあり、旗持っている者もあり、銃担っている者もあり、そのひとりひとりの兵隊の形を鋏でもって切り抜かせ、不器用なお慶は、朝から昼飯も食わず日暮頃までかかって、やっと三十人くらい、それも大将の鬚を片方切り落したり、銃持つ兵隊の手を、熊の手み・・・ 太宰治 「黄金風景」
・・・ある日思い切って左の頬をうんと切り落としてから後はこの不思議な幽霊に脅かされる事は二度となくなった。 いつまでやってもついにできあがる見込みはなさそうに思われだした。ある日K君にこのごろ得たいろいろの経験を話しているうちに同君が次のよう・・・ 寺田寅彦 「自画像」
出典:青空文庫