ここは南蛮寺の堂内である。ふだんならばまだ硝子画の窓に日の光の当っている時分であろう。が、今日は梅雨曇りだけに、日の暮の暗さと変りはない。その中にただゴティック風の柱がぼんやり木の肌を光らせながら、高だかとレクトリウムを守っている。そ・・・ 芥川竜之介 「おしの」
ある春の夕、Padre Organtino はたった一人、長いアビト(法衣の裾を引きながら、南蛮寺の庭を歩いていた。 庭には松や檜の間に、薔薇だの、橄欖だの、月桂だの、西洋の植物が植えてあった。殊に咲き始めた薔薇の花は・・・ 芥川竜之介 「神神の微笑」
・・・巴は当初南蛮寺に住した天主教徒であったが、その後何かの事情から、DS 如来を捨てて仏門に帰依する事になった。書中に云っている所から推すと、彼は老儒の学にも造詣のある、一かどの才子だったらしい。 破提宇子の流布本は、華頂山文庫の蔵本を、明・・・ 芥川竜之介 「るしへる」
出典:青空文庫