・・・そうしてまたこのモンテーという言葉自身が暗示するように、たとえば日本の生花の芸術やまた造庭の芸術でも、やはりいろいろのものを取り合わせ、付け合わせ、モンタージュを行なって、そうしてそこに新しい世界を創造するのであって、その芸術の技法には相生・・・ 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・田舎地方の婦人などが衣裳に金を費しながら其染色模様の取合せを知らず、金の割合に引立たずとて都下の人に笑わるゝこと多し。是等は都て美術上の意匠に存することなれば、万事質素の教は教として、其質素の中にも、凡そ婦人たる者は身の装を工風するにも、貧・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・許六が「発句は取合せものなり」というに対して芭蕉が「これほど仕よきことあるを人は知らずや」といえるを見ても、あながち取合せを排斥するにはあらざるべし。されどここに言える取合せとは二種の取合せをいうものにして、洒堂のごとく三種の取合せをいうに・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・ おみちは朝から畑にあるもので食べられるものを集めていろいろに取り合せてみた。嘉吉は朝いつもの時刻に眼をさましてから寝そべったまま煙草を二、三服ふかしてまたすうすう眠ってしまった。 この一年に二日しかない恐らくは太陽からも許されそう・・・ 宮沢賢治 「十六日」
・・・旗や電燈が、ひのきの枝ややどり木などと、上手に取り合せられて装飾され、まだ七八人の人が、せっせと明後日の仕度をして居りました。 私たちは教会の玄関に立って、ベルを押しました。 すぐ赭ら顔の白髪の元気のよさそうなおじいさんが、かなづち・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・だから服飾として誇張されているものが、そのままほんとうの生々した女の心の張りから生じる線や色の取合せのニューアンスというものが壊される場合が比較的に多い。夜のお化粧とか朝のお化粧とかそう云う化粧読本の箇条としての一般論みたいなものは行き渡っ・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・「妙な取り合せですなあ。」「自然主義の本と社会主義の本とは別々ですよ。」「はあ。どうも好く分かりませんなあ。本の名でも知れていますか。」「一々書いてありますよ。」脚長は卓の上に置いた新聞を取って、広げて己の前へ出した。 ・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・主として画題選択の斬新であるが、時には珍しい形象の取り合わせ、あるいは人の意表にいづるごとき新しい図取りを試みる。しかしこれらの画家を動かしているものは、岡倉覚三氏の時代の自然観、芸術観であって、その手腕の自由巧妙なるにかかわらず、我らの心・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫