・・・ 流布本太平記巻三十六、細川相模守清氏叛逆の事を記した段に、「外法成就の志一上人鎌倉より上つて」云とある。神田本同書には、「此志一上人はもとより邪天道法成就の人なる上、近頃鎌倉にて諸人奇特の思をなし、帰依浅からざる上、畠山入道諸事深く信・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・僕と菊代さんは、お前たちに叛逆をたくらんだが、お前たちは意外に強くて、僕たちは惨敗を喫したんだ。押せども、引けども、お前たちは、びくともしねえ。 だって、あなたたちは、間違った事をしているのですもの。 聖書にこれあり。赦さるる事の少・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・ニイチェの意味に於ては、それがキリストに叛逆する標語であつた。あの中世紀の魔教サバトの徒は、耶蘇とキリスト教とを冒涜する目的から、故意に模擬の十字架を立てて裸女を架け、或は幼児を架けて殺戮した。反キリストの詩人ニイチェの意味に於て、Ecce・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・檄はマルクスと二人の同志とを叛逆罪として起訴する種に使われた。公判の結果、一同無罪となった。 これはイエニーにとって貴重な経験であった。良人カールとその同志たちの行動は「実に犯してよい行動、本来からいえばブルジョアジーの果すべき義務であ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ まさか御叛逆ではねえ。老近侍 もう、ずんと前からの事じゃと申す話でござるわ、陛下にお書面でお坊様のお役をきめる事はわしにさせて下されと申し越されてお出でなされたのはの。二三度までのお願にはお偉いお方じゃ程に陛下もおだやかに「ならぬ・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・さては国に大乱でも起ったか、公の叛逆人でも出来たかと思うて、三門をあけさせた。それになんじゃ。御身が家の下人の詮議か。当山は勅願の寺院で、三門には勅額をかけ、七重の塔には宸翰金字の経文が蔵めてある。ここで狼藉を働かれると、国守は検校の責めを・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
出典:青空文庫