・・・しかし、さすがに逃げおくれた連中がいて、押収された煙草は二日間合計して、十五万本だということである。 逃げおくれた連中だけで十五万本、だから大阪全体でどれだけの横流しの煙草があるか、想像も出来ないくらいだ。 ある皮肉屋が言っていた。・・・ 織田作之助 「大阪の憂鬱」
・・・ いまその施薬の総額を見積ると、見舞金が七十人分七百円、薬が二千百円、原価にすれば印紙税共四百二十円、結局合計千二百円が実際に費った金額だ。ところが、この千二百円を施すのに、丹造は幾万円の広告費を投じていることか、広告は最初の一回だけで・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・見料一人三十銭、三人分で……と細かく計算するのも浅ましいが、合計九十銭の現金では大晦日は越せない、と思えば、何が降ってもそこを動かない覚悟だった。家には一銭の現金もない筈だ。いろんな払いも滞っている。だから、珈琲どころではないのだ。おまけに・・・ 織田作之助 「雪の夜」
・・・どんな小さな地震をも感じる地震計という機械に表われた数は、合計千七百回以上に上っています。 二 災害の来た一日はちょうど二百十日の前日で、東京では早朝からはげしい風雨を見ましたが、十時ごろになると空も青々とはれて・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・けれども画壇の一部に於いては、鶴見はいつも金庫の傍で暮している、という奇妙な囁きも交わされているらしく、とすると仙之助氏の生活の場所も合計三つになるわけであるが、そのような囁きは、貧困で自堕落な画家の間にだけもっぱら流行している様子で、れい・・・ 太宰治 「花火」
・・・メンコには、それぞれお角力さんの絵が画かれていて、東の横綱から前頭まで、また西の横綱から前頭まで、東西五枚ずつ、合計十枚、ある筈なんだが、一枚たりない。東の横綱がないんだ。どういうわけか、そこまでは僕も知らない。メンコ屋で、品切れになってい・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・一日に紙巻二十本の割で四十年吸ったとすると合計二十九万二千本、ざっと三十万本である。一本の長さ八.五センチとして、それだけの朝日を縦につなぐと二四八二〇メートル、ざっと六里で思った程でもない。煙の容積にしたらどのくらいになるか。仮りに巻煙草・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・そうすると合計nかけるのm本の線が空間に複雑なる網を織りだす。仮にnが一千万、mが百とすると十億本の線が空間に入乱れる。これらの線が一度はどこかの郵便局へ束になって集められ、そこで選り分けられて、幾筋かの鉄道線路に流れ込み、それが途中で次々・・・ 寺田寅彦 「年賀状」
・・・これをかなの数にして合計すると百十字で、全体三百十字の三分の一を超過している。それでこの十首より成る一群の内容は「松の葉に雨の露が玉のごとくにおいて、それがこぼれ落ちる」というだけのことを繰り返し繰り返し諷詠したものであって、連作としてはお・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・次にその残りの各々から蛋白質脂肪含水炭素の可消化量を計算してそれから各の発する熱量を計算して合計します。四千三百兆大カロリーとか何とか大体出て参りましょう。今度は牛羊、豚、馬、鶏鯨という工合に今の通りやります。合計二千三百兆大カロリーとか何・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫