・・・特に啓蒙的な目的でつかう場合こまる。桃太郎が桃から生れて、犬、猿、キジをひきつれて鬼という架空的存在を征服して、宝物をひとりで取って平気でいるのでは、ものにならない。 桃太郎は貧乏な小作人の子で、鬼は悪地主だ。三人の仲間を中心として悪地・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・また、過去のすべての文化的蓄積を最も革命的に利用し得るよう自身を鍛え洗われたものとし、世界観の隅々までをプロレタリアに組織するためには、先ず、文化啓蒙活動をとおしてあらゆる機会に勤労大衆と接触しその一員となることこそ、正しい第一歩であること・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・の物理についての啓蒙的な記述があるいはコフマンの「科学の学校」の抄略された頁の幾分かを補充する役に立つかもしれない。庄司彦六博士の「文化の物理学」はそれよりも高い程度で常識に近く扱われている。 アインシュタインはこの「物理学はいかに創ら・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・この四角い帽子をいただいた二つの頭は、果して新しき老農夫を満足し啓蒙するだけの知識をもっていながら、彼等が余りエレガントであるために只ああやって蒼白き微笑のみで答えたのか。または、大きな声では云えないが、頭はただきれいに分けた髪の毛の台に過・・・ 宮本百合子 「北へ行く」
・・・ 明治の大啓蒙家であった福沢諭吉が、自分の著書にいつも東京平民福沢諭吉と署名したことを知らないものはない。これは彼の気骨を物語っている。その反面に、明治が、その現実において、どんなにまで封建的であり、身分の観念と結びついた官僚主義が横行・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ ブルジョア批評は読者啓蒙を等閑にして来た。これを読むのは、どうせ文学がある程度までわかる人間だ。そういう態度だった。今日のプロレタリア文学批評は、読者大衆に、小説のよみかたに際して新しい文化的基準を与えるというところまで精力的であるべ・・・ 宮本百合子 「こういう月評が欲しい」
・・・同時に、未来の作家は、まだ工場学校生徒、共産党青年部員として、そういう芸術的啓蒙をうけつつ、クラブの研究会で育っている。 ところで、作家の側では、ソヴェト同盟の社会的生活がじっくり腰を据えた建設時代に入るにつれ、プロレタリア芸術の発展の・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 啓蒙的な記事としては、そこが欠点であった。自分はそう思うのであった。「大体、こんなものに書くという法はないじゃないか」「…………」「え? 君の小説こそ読ましてもらいたい。僕はこれでもずっと夏目漱石や君の小説は読んでいたんだ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・昔のプロレタリア文学運動の時代は、日本のすべての解放運動が非合法におかれていたために、たとえば『戦旗』は階級的な文化の文学雑誌であるとともに、その半面では労働者階級の経済、政治の国際的な啓蒙誌でもあった。『ナップ』『プロレタリア文学』もそれ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・日本が立憲政体であることを知っている位の啓蒙者は、次に諸君に向って必ず云うだろう。 ――日本はそれに非常な人口だそうじゃないですか。年にどの位ずつ殖えますかね? ――七八十万です。 ――アイヤイ、ヤイ! 何と沢山だ! が、真・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
出典:青空文庫