・・・にしぶき流れ、降積りたる雹を染め候が、赤き霜柱の如く、暫時は消えもやらず有之候よし、貧道など口にいたし候もいかが、相頼まれ申候ことづてのみ、いずれ仏菩薩の思召す処にはこれあるまじく、奇しく厳しき明神の嚮導指示のもとに、化鳥の類の所為にもやと・・・ 泉鏡花 「神鷺之巻」
・・・ ――その時、かねて校庭に養われて、嚮導に立った犬の、恥じて自ら殺したとも言い、しからずと言うのが――ここに顕れたのでありました。 一行が遭難の日は、学校に例として、食饌を備えるそうです。ちょうどその夜に当ったのです。が、同じ月、同・・・ 泉鏡花 「雪霊続記」
・・・さてはいよいよこれなりけりと心勇みて、疾く嚮導すべき人を得んと先ず観音堂を索むるに、見渡す限りそれかと覚しきものも見えねばいささか心惑う折から、寒月子は岨道を遥かに上り行きて、ここに堂あり堂ありと叫ぶ。嬉しやと己も走り上りて其処に至れば、眼・・・ 幸田露伴 「知々夫紀行」
出典:青空文庫