・・・すぐ第一等の女工さんでごく上等のものばかり、はんけちと云って、薄色もありましょうが、おもに白絹へ、蝶花を綺麗に刺繍をするんですが、いい品は、国産の誉れの一つで、内地より、外国へ高級品で出たんですって。」「なるほど。」 ・・・ 泉鏡花 「縷紅新草」
・・・を見て、そして最後に大日本松竹国産発声映画「マダムと女房」というのを見ることになったのも思えば妙な回り合わせである。「パリの屋根の下」にはたいしたドラマはない。ちょっとしたロマンスはあるが、それはシャボン玉のようなロマンスである。ちょっ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・しかしまたピンヘッドやサンライズを駆逐して国産を宣伝した点では一種のファシストでもあったのである。彼もたしかに時代の新人ではあった。 旧時代のハイカラ岸田吟香の洋品店へ、Sちゃんが象印の歯みがきを買いに行ったら、どう聞き違えたものか、お・・・ 寺田寅彦 「銀座アルプス」
・・・もっともステッキに限らず大概の国産商品がそうであり、ちゃんとした器械類でさえも長持ちのするのは珍しい。ステッキが用のない人のぜいたく品ならば、なるべく早くいけなくなって、始終新しく取り換えるほうがいいかもしれない。実際新しいステッキを買うと・・・ 寺田寅彦 「ステッキ」
・・・今まではこの五彩の眩ゆいうちに身を置いて、少しは得意であったが、気が付いて見ると、これらは皆異国産の思想を青く綴じたり赤く綴じたりしたもののみである。単に所有という点からいえば聊か富という念も起るが、それは親の遺産を受け継いだ富ではなくって・・・ 夏目漱石 「『東洋美術図譜』」
・・・ ついでまた朋友親戚等より、某国産の銘葉を得て、わずかに一、二管を試みたる後には、以前のものはこれを吸うべからざるのみならず、かたわらにこれを薫ずる者あれば、その臭気を嗅ぐにも堪えず。もしも強いて自からこれを用いんとすれば、ただ苦痛不快・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・ アランの言葉と云うと、その思意的な情感がうけとられ、評価され、国産であると思意的な人間感情そのものの存在が理知と一つにされたりリアリティーが疑われるというようなことがあれば、そこにはやはり今日の日本の文学、或は作家の心というものが・・・ 宮本百合子 「現実と文学」
・・・輸入品の節約をするように。国産品も節約をするように。だが酒、煙草、絹はどうか遠慮なくつかうようにと。 私たちは学校の家事でも、節約ということの目標を、酒、煙草、絹の衣類においてこれまで教えられて来た。乃木夫人、東郷夫人の貞烈と節倹とは、・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・に入る 資本五十万円、箇人が大阪の××工業に売り 元のオヤジは専務、 専務が細君のおじの友人レジスター 電気チクオン器の部分品、タイムレコーダー等、タイムレコーダー アメリカのイミで 国産より高いのでうれず「僕が一番・・・ 宮本百合子 「SISIDO」
出典:青空文庫