・・・な天稟のままに気稟の側から全幕を演じ、この幕もそのようなものとして自然に演じているのだけれど、作者としては、友代のそういう自然発生の活動性、積極的な人柄を、周囲との関係でどう考えて見ているのだろうか。国防婦人会の班長になった友代が、その役目・・・ 宮本百合子 「「建設の明暗」の印象」
・・・ とっつきが国防科学協会の研究室だ。壁にかかってる毒ガス演習の実写、飛行機図解、銃器図解の前へ数人若い男女がかたまって案内の豆電燈をつけたり消したりしているのが見える。「帝国主義トファッシズムニ対抗セヨ」赤いプラカート。 戸のしまっ・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ 一二年来、国防婦人会、愛国婦人会その他婦人を家庭の外へ外へと動員する傾向がつよめられて一般家庭の感情には、婦人を家へ、と取りかえしたい心持が相当湧いて来ていると思われる。 この感情は、婦人の政治的な向上をともすれば外出がちな形をも・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・会議の布告。国防飛行協会クラブ主催屋外音楽会の広告ベンチがいくつも壁にそって並んでいる。 赤い布で頭を包んだ婦人郵便配達が、ベンチの上へパンパンに書附類の入った黒鞄をひろげいそがしそうに何か探している。太い脚を黒い編あげ靴がキュッとしめ・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・又そろって頭をあげて、黙ったまま眼にちからを入れた表情で、カーキ色の国防服めいたものを着ている、はげ上った、精悍な風貌を見つめた。「わたしは、外国へやられたり、牢屋へ入ったりばかりしていて、これまでに結婚生活をしたのは、たった七ヵ月ぐら・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・そして日本では新しく国防保安法が成立し、治安維持法が改正されて死刑法となり、アメリカとの戦争を計画していた東條内閣の下では、文学も軍協力以外には存在を許さない状態になっていたからだった。そのような状態におかれていた日本のどこからも――文学か・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫