・・・汝が心光地に凭て円きを 里見義成依然形勝関東を控ふ 剣豪犬士の功に非ざる無し 百里の江山掌握に帰す 八州の草本威風に偃す 驕将敗を取るは車戦に由る 赤壁名と成すは火攻の為めなり 強隣を圧服する果して何の術ぞ 工夫ただ英雄を攪・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・そして富岡先生は常に猛烈に常に富岡氏を圧服するに慣れている、その結果として富岡氏が希望し承認し或は飛びつきたい程に望んでいることでも、あの執拗れた焦熬している富岡先生の御機嫌に少しでも触ろうものなら直ぐ一撃のもとに破壊されて了う。この辺のと・・・ 国木田独歩 「富岡先生」
・・・自分のような身も心も弱い人間は、孟夏を迎うる強烈な自然の力に圧服されてひとりでにこんな心持になるのかと考えた事もある。こんな厭な時候に、ただ一つ嬉しいのは、心ゆくばかり降る雨の夕を、風呂に行く事である。泥濘のひどい道に古靴を引きずって役所か・・・ 寺田寅彦 「やもり物語」
・・・そしてそれが、自分を女という古い掟で縛りつけ圧服してしまおうとする凡ゆる古い力に対抗し得るたった一つの道だと思った」女としての感情がここへ来るにはアサが単にお下髪の使い屋から苦労してたたき込んだ腕をもっているというだけが理由ではない生活感情・・・ 宮本百合子 「徳永直の「はたらく人々」」
・・・及び感性能力の貧弱な人々にまでも明確に了解させねばならぬそれほども、私は私自身の独断的表現を圧伏させ、文学入門的詳細な説明をしていることは、月評としては赦されない。だが、私は自分の指標とした感覚なるものについて今一度感覚入門的な独断論を課題・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫