三十年ほどの間すっかり俳句の世間から遠ざかって仮寝をしていた間に、いろいろな「新型式俳句」が発生しているのを、やっとこのごろ目をさましてはじめて気がついて驚いているところである。二十二字三字四字から二十五字六字というのがあ・・・ 寺田寅彦 「俳句の型式とその進化」
・・・事がらが、見方によってはある有限数の型式的要素の空間的排列の方式に関するものであると見る事ができるからである。輓近の数学の種々な方面の異常な進歩はむしろいろいろな新しいこの方面の応用を暗示するようである。また「除外例」というもののある事から・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・この現象が統計的型式から見て、いわゆる地震群の生起とよく似たものであることは、すでに他の場所で報告したことがあった。 もう一つよく似た現象としては、銀杏の葉の落ち方が注意される。自分の関係しているある研究所の居室の室外にこの木の大木のこ・・・ 寺田寅彦 「藤の実」
・・・ 映画としてのこの絵巻のストーリーは、猿蟹合戦より忠臣蔵に至るあらゆる仇打ち物語に典型的な型式を具えている。はじめは仇打ち事件の素因への道行であり、次に第一のクライマックスの殺し場がある。その次に復讐への径路があって第二の頂点仇打ちの場・・・ 寺田寅彦 「山中常盤双紙」
・・・ 以上の匆卒なる瞥見によっても、いわゆる短歌の連作と見らるべきものの中には非常に多様な型式が実存し、極端に単純な輪唱ふうのものから、非常に複雑で進行のテンポの急なものまでいろいろの段階のあることだけはうかがわれると思うのである。 左・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
出典:青空文庫