・・・十月によって人民の文化の生れる社会的可能は拡大され、その基盤は拡大されたが、そのころは文学的才能の存在には「天賦」的事情が多かった。「私は愛す」の作者アヴデンコが革命当時「保護者のない子供たち」ベス・プリゾールヌイの一人であったというこ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・順調な家庭生活の社会的基盤さえも失われている社会で、どうして不幸が根絶されるだろう。 民主的進展の速いヨーロッパ諸国で、この大戦後、婦人の政治的・社会的発言が強くなった必然は、ここにこそある。未亡人という文字は単調だが、それを実質づける・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・しかし、民主的な文学なら、必ずそこを基盤としなければならない民衆の健やかで平明で条理のとおった現実的判断が、この試作の基調となっています。読んで、アクのつよい、いやな後味は一つもなかったでしょう? 小さいけれども、まともなものです。『新日本・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・を規定する社会的基盤の図表を示した。わたしの席は後でそれをみることができなかった。が説明によって理解したところでは、民主革命の推進力である労働者階級を主軸としてその同盟者としての農民、勤め人、中小商工業者、近ごろはアルバイトの必要から勤労生・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・文学者の力量は文学者として十分生活上の経済的基盤を与えるし、そのことは作家の思想性をも確立させ、強大な出版企業に対抗するだけの社会性を身にそなえたものとして来ているかと思える。 日本の作家の事情は、少くともこれまでは、中途半端であった。・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・民主主義文学運動の批評が、すくなくともブルジョア文学における観賞批評でないことはあきらかだし、人民の民主主義的課題という広い基盤に結び合わされながら、文学の独自性において活動しなければならないことも分り切ったことだと思います。世界文学は、プ・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・と云った漱石の諷刺は、物質と精神の安定を基盤としている境遇の人々に対して成立した、庶民の諷刺である。こんにち、かつての上流が大部分斜陽族という異様な名称によって経済と精神の本質を語られるものとなっていること。その「斜陽」という小説を書いた太・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
・・・ 天皇が戦争責任を負うにたえない人物であることが証明され、彼の一族である皇族が生活の経済的基盤を闇屋に負っている実情と、ファシストやテロリストであった者が、「建設期に入ったから」と、それなりの「建設活動」を進行させている事実とを眺めわた・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・その社会的基盤のひろさ、多様さにふさわしく、これらの婦人たちは人民の文学としての発言の可能を示しはじめている。けれども、人民生活と文学との苛烈さは、「朝鮮ヤキ」のすぐれた作品を最後として譲原昌子を結核にたおした。新しく書きはじめている婦人た・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・それは結局東條は死んだのではないということをいい得るだけの社会的基盤がまだあることを家族の人が知っているからです。ファシズムが死んでいないということを知っているからです。同時に今日の新聞はA級の容疑者が十九名釈放されたと伝えています。そして・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
出典:青空文庫