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・・・鼻緒のゆるんでいるとこへ、十文位の大きな足をぐっと突込んで、いやに裾をぱっぱっとさせて外輪に歩くんだね。」「それから、君、イとエの発音がちがっていなくッちゃいけないぜ。電車の中で小説を読んでいるような女の話を聞いて見たまえ。まず十中の九・・・
永井荷風
「十日の菊」
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・・・東京名物の一銭蒸汽の桟橋につらなって、浦安通いの大きな外輪の汽船が、時には二艘も三艘も、別の桟橋につながれていた時分の事である。 わたくしは朝寐坊むらくという噺家の弟子になって一年あまり、毎夜市中諸処の寄席に通っていた事があった。その年・・・
永井荷風
「雪の日」