・・・今日は私も、夜昼とり違えでないから気分もよく、かんしゃくも納っています 御注文の辞典類は木村の『和独大辞典』と白水社の『和仏辞典』とがあったので、書店から直接そちらへ送るように送金致しました。『朝日年鑑』と片山の『ドイツ文法辞典』と・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・その見とおしに向って、一定の希望をつなぎ、常識に順応し、自身をよくしてゆくこと、ひとに使われるもの、命令をされるもの、夜昼よく働いて主人の昼寝を安らかならしめるために、よい者としての自分の前途を明るく眺めることは、はたして彼ら少年にとってた・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・学生とゴーリキイとは夜昼交代にそこへ寝て、ゴーリキイはヴォルガ河の波止場の人足をやって十五カペイキ、二十カペイキと稼ぐ。――ロシア人はヴォルガ河を「母なるヴォルガ」と呼んで愛するが、ゴーリキイの半生のさまざまな場面は洋々としたヴォルガの広い・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・学生とゴーリキイとは夜昼かわり番こにその寝台に眠り、朝になるとゴーリキイは「飢えないために、ヴォルガへ、波止場へと出かけて行った。そこで十五――二十哥を稼ぐことは容易であった。」 幼年時代は祖父の家の恐ろしい慾心の紛糾を目撃し、転々と移・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・草ばかり夜昼繁茂する。夜半、目が醒める。微に草の葉のすれ合う音がする。月を吹く風か? いやあの青草のまた伸び上る戦ぎであろう。菁は凄に通ずると感じながらその戦ぎを聞いた。 その空家の叢の蔭に、いつからとなく一条草が踏みつけられた。そこか・・・ 宮本百合子 「蓮花図」
出典:青空文庫