・・・』『やっと買いました、大枚一円二十五銭を投じたのですがね、未だ一度しか使って見ません。』と畳んで棒のごとくする樫の将几を開いて見せた。『いよいよ本式になったナ』と自分は将几と小山とを見比べて言った。『そうです、もうここまで行・・・ 国木田独歩 「小春」
・・・ただし願わくはスラリと大枚な高慢税を出して楽みたい。廷珸や正賓のような者に誰しも関係したくは思うまい。それからまた、いくら詰らぬ人にだって、鼎の足を折ったために身を投げてもらったりなぞしたくはあるまい。・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・ ウィスキーは内国産でも現在は薬用に足りるだけ純質なのが少くて、散々人手を経て一ビン買い小売りをしないというので大枚を投じ、うちにあると、無駄にのむ奴がいるから紀さんにあずけてあります。それから水筒を又一つ入れて達治さんに送っておきまし・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫