・・・ たとえば政府にて、学校を立てて生徒を教え、大蔵省を設けて租税を集むるは、政府の政なり。平民が、学塾を開いて生徒を教え、地面を所有して地代小作米を取立つるは、これを何と称すべきや。政府にては学校といい、平民にては塾といい、政府にては大蔵・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・ その法、他なし、文部省、工部省の学校を分離して御有となすときは、本省においては、従来学校に給したる定額を省くべきは当然の算数にして、この定額金は必ず大蔵省に帰することならん。大蔵省においては期せずして歳出を減じたることなれば、その金額・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・ 昨夜の夕刊には、大蔵省の初の月給振替払いの日のことがのっていた。月給百五十円以上の人々は、現金としては半額しか入っていない月給袋をうけとった。すぐ振替えをとることが出来るのだそうだけれど、私たちは閃くような思いで、うちはどうするのだろ・・・ 宮本百合子 「家庭と学生」
・・・「そんなこと云って、大蔵省いいんですか」「大丈夫です。不時収入があるんですから――……尤も私のはいつだって不時収入ですが……」 尾世川は、しまってあるステッキをわざわざ戸棚から出し、それを腕にかけて外へ出た。 駅前の広場で、・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・ 没収した優秀な機械は、逓信省や大蔵省の役人が家へもって帰って据えつけたというような巷間の噂をきいたのも、それにつづく頃ではなかったろうか。 短波を禁止していた日本当局は、誰かが優良品を輸入するとすぐ、短波受信に必要な機械の部分品を・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
出典:青空文庫