・・・ しかし、その時はまだその時で、一層奮励の筆をもって、補いをつけることが出来ると、覚悟した。 すると、また、心の奥から、国府津に送る金はどうすると尋問し出す。これが最もさし迫った任務である。しかし、それもまた、僕には、残忍なほど明確・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・余、甚だ然りと答へ、ともに奮励して大いに為すあらんことを誓ひき」と。明かに×××的意義を帯びていた日清戦争に際して、ちょうど、国民解放戦争にでも際会したるが如き歓喜をもらしている。また、威海衛の大攻撃と支那北洋艦隊の全滅を通信するにあたって・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・ 二 まだ築地本願寺側の僑居にあった時、わたしは大に奮励して長篇の小説に筆をつけたことがあった。その題も『黄昏』と命じて、発端およそ百枚ばかり書いたのであるが、それぎり筆を投じて草稿を机の抽斗に突き込んでしまった・・・ 永井荷風 「十日の菊」
・・・とか、「再来」とか、「奮励」とか書くのでした。学生はその間、いかにも心配そうに首をちぢめているのでしたが、それからそっと肩をすぼめて廊下まで出て、友だちにそのしるしを読んでもらって、よろこんだりしょげたりするのでした。 ぐんぐん試験が済・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
出典:青空文庫