・・・そのころの東京には、モナ・リザをはだかにしてみたり、政岡の亭主について考えてみたり、ジャンヌ・ダアクや一葉など、すべてを女体として扱う疲れ果てた好色が、一群の男たちの間に流行していた。そのような極北の情慾は、謂わばあの虚無ではないのか。しか・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・恥じるがいい。女体の不言実行の愛とは、何を意味するか。ああ、君のぼろを見とどけてしまった私の眼を、私自身でくじり取ろうとした痛苦の夜々を、知っているか。 人には、それぞれ天職というものが与えられています。君は、私を嘘つきだと言った。もっ・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・負っている女の子ほど可愛いものは無いのだ、生かして置きたい、生かして、いつまでも自分の傍にいさせたい、どんなに醜い顔になってもかまわぬ、私はラプンツェルを好きなのだ、不思議な花、森の精、嵐気から生れた女体、いつまでも消えずにいてくれ、と哀愁・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
出典:青空文庫