・・・ こんな事を言っていると、いかにも私は我慢してキザに木石を装っている男か、或いは、イムポテンツか、或いは、実は意馬心猿なりと雖も如何せんもてず、振られどおしの男のように思うひともあるかも知れぬが、私は決してイムポテンツでもないし、また、・・・ 太宰治 「チャンス」
・・・人と歩調を合わして行きたいという誘惑を感じても、如何せんどうも私にはその誘惑に従う訳に行かぬ。丁度跛を兵式体操に引き出したようなもので、如何せんどうも歩調が揃わぬ。それは、諸君と行動を共にしたいけれども、どうもそう行かないので仕方がない。こ・・・ 夏目漱石 「模倣と独立」
・・・若しも妻の不幸に反して夫が癩病に罹りたらば如何せん。妻は之を見棄てゝ颯々と家を去る可きや。我輩に於ては甚だ不同意なり。否な記者先生も或は不同意ならん。孝婦伝など見れば、何々女は貞操無比、夫の悪疾を看護して何十年一日の如し云々とて称賛したるも・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・い みてくりい みちぇくりいいうことを行けよという いきなさい いきなはい 下士に同じ 下士に同じことを 又いきない 又いきなはりい如何せんかと どをしよをか どをしゆうか・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・ また口実に云く、家に余財なきにあらず、身に余暇なきにあらざれども、如何せん、才学を以て人を教うるに足るなし、子を学校に託するは身に才なきがためなりと。この口実も一応もっともなるに聞こゆれども、到底許すべからざるの遁辞のみ。身に覚えたる・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・固より願わしき事なれども、如何せん、是れは唯今日の希望にして、今日の実際に行う可らず。強いて実行せんとすれば、其便利は以て弊害を償うに足らざることある可し。我輩の窃に恐るゝ所なり。蓋し男女交際法の尚お未熟なる時代には、両性の間、単に肉交ある・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・近く喩えを取り、今日の婦人女子をして、その良人父兄の品行を学ぶことあらしめたらばこれを如何せん。試みに男子の胸裡にその次第の図面を画き、我が妻女がまさしく我に傚い、我が花柳に耽ると同時に彼らは緑陰に戯れ、昨夜自分は深更家に帰りて面目なかりし・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫