・・・ 男女が平等ということは、同じ労働に対し同じ賃金ということを当然約束しているけれども、これまでの日本の実状では、同じ職場で同じ部門に働いている男女が必ずしも同じ程度の腕をもっているとは云えない。女は、これまでじきやめてしまうもの、やすい・・・ 宮本百合子 「いのちの使われかた」
・・・何をたべたか、何がたべたいかという結果として出たところで調査した上は、もう一歩進めて、家庭の主婦が今痛切に何をたべさせたがっているか、何を求めているかという実状に即して統計をとって見る必要があるだろうと思えた。主婦そのものが、家族のために食・・・ 宮本百合子 「「うどんくい」」
・・・の配合、陰翳を味わう能力を増すといわれているありきたりな概括にまで思い及んだのであるが、今度は立場を逆にして、画家はどの程度にまで自分の絵を鑑賞しようとする人々の生理的な条件――その疲労とか休安とかの実状を考慮に入れているであろうかと、こと・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・には目をくれたくない程、生活の実情によって前進させられているのだから、その感情の奥底にある一つの太い流れ、「何から何までどうせ自分たちでやって行かなければならないのだから」という思いを、屈托した不平の呟きとせずこの際、それを条理をもって整理・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・ 官僚統計さえ、その多くは焼きすてられなければならなかったような日本の実状へ、新しく響く民主化の声は、世論、というものの意味を人々に知らせはじめた。人民がどんな意見を云おうにも口をふさがれていた数年がつづいた日本では、公然と自分の意見を・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・ここに、今日の日本の民主主義の実状があり、その段階がある。封建的な人間性の否定に抗すると同時に、その意欲と行動との統一された表現として、歴史はすでにはっきりと、資本主義の社会の混乱と矛盾とにたいして合理的処置を主張する勤労大衆の民主的要素が・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・一日一日と騰貴する物価に、決して追いつくことのない待遇改善の実情は、妻であり母である女性の辛苦を言語に絶した状態においています。若い勤労婦人にとって、現在のような経済上の危機は、彼女たちのモラルの危機としてあらわれています。更に、まだ全然社・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・日本婦人大衆の生活の実状は、このようなものです。戦争による未亡人の生活確立に関して、植民地から引揚げて来た人々の生活再建に対して、今日の吉田内閣は、どんな責任ある処置も行うことが出来ずにいます。 政府によって言明された大量馘首政策が比較・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・をもっているのではない実状を自覚すべきである。一旦「国宝」にしたら、もう官僚機構の腐敗のままに薄情きわまる扱いをして恥も知らないやりかたは、何と「赤紙一枚」を思わせるだろう。きょうの辛さに喘いでいる数十万の未亡人、孤児、戦傷者たちは、かつて・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・ 六年制であってさえ、この実情であったのだけれども、それが国民学校となり八年制となったとき、状態はどのように好転するだろう。学校の入費の何割が国庫で負担されることになるのだろうか。この点に切実な生活からの要望があると思う。六年で尋常が終・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
出典:青空文庫