・・・この前お父さんが持ってきて学校へ寄贈した巨きな蟹の甲らだのとなかいの角だの今だってみんな標本室にあるんだ。六年生なんか授業のとき先生がかわるがわる教室へ持って行くよ。一昨年修学旅行で〔以下数文字分空白〕「お父さんはこの次はおまえにラッコ・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・役所では窓に黄いろな日覆もできましたし隣りの所長の室には電気会社から寄贈になった直径七デシもある大きな扇風機も据えつけられました。あまり暑い日の午後などは所長が自分で立って間の扉をあけて、「さあ諸君、少し風にあたりたまえ。」なんて云った・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ 幕の横に、「寄贈、お餅沢山、人の四郎氏、人のかん子氏」と大きな札が出ました。狐の生徒は悦んで手をパチパチ叩きました。 その時ピーと笛が鳴りました。 紺三郎がエヘンエヘンとせきばらいをしながら幕の横から出て来て丁寧にお辞儀を・・・ 宮沢賢治 「雪渡り」
・・・十何年来買ったことのなかった色々の月刊雑誌も寄贈をやめましたから、このことも様子が違います。さて買うとなると、この頃の内容広告は一円が惜しいようなものでね。しかし悪い米も食べてみなければ、悪さも良さもわからないというところもあります。 ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 終りにのぞみ、何心なく『文芸街』の頁を繰っていたら『九州文化』などいう雑誌の名も見え、東京で発行されているこの雑誌には各地方からの寄贈雑誌の名が示されている。地方で刊行されているそれぞれの雑誌は、相互に刊行物の活溌な交換批評のやりとり・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・この本をナイチンゲールから寄贈されたジョン・ステュアート・ミルが、この本を手にした労働者と同様に、彼女の理屈はよく納得されないといった時、四十歳に達していたフロレンスはさも意外な面持であった。 社会における「悪の起源」は神が完全であるか・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
出典:青空文庫