・・・全くこれではベルリンの小学生ではないが、支那人と日本人の違いはどこで判るか? ハイ日本人というものは眼鏡と写真機をもっています、ですね。 四日。火曜日、夜中の二時。 早寝をしているはずなのに、こんな時間に手紙を書いたのではすっかり馬・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・それでさえ、求人の四割を充しただけで、公の職業紹介によらない斡旋屋は、小学生一人について三十円の手数料さえむさぼったと記録されている。 八年制の国民学校を卒業した少年少女たちは、やっぱりそのようにして勤労の生活に入ってゆくのであろうが、・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
・・・ 先の教科書では、洋服を着、靴をはいて画かれていた小学生の姿が、改正されたものでは、和服で藁草履をはいている。これは何故であろうか? ある人はこれを説明して、「もとの絵は都会の生活を主にして画かれていた。あれを見て、農民はいたずらに虚栄心を・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・少し大きい小学生となってからは、ひとりで夏休みじゅう、おばあさんのところで暮した。その村の年よりたち、牛や馬、犬、子供たち、ばかの乞食、気味のわるい半分乞食のようなばあさん、それらの人々の生活は、山々の眺望や雑木林の中に生えるきのことともに・・・ 宮本百合子 「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」
・・・マダム・キュリーは小学生だったとき、奪われている母国語についてどんな痛苦を経験したろうか。ワンダ・ワシレフスカヤの文学は、ポーランドの人々が真に人民のいのちを生きる言葉としてポーランド語をとりかえしてゆく一歩一歩の間から生れた。 日本の・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ 同じ雨の朝を、登校する小学生のすべてが、同じ感情で眺めるであろうか? ゆとりのある家の子供である一郎は、雨がふっているのを見てひどく勇み立った。何故ならば、一郎はこの間誕生日の祝いにいいゴム長を一足買って貰った。雨がふったから今日こそ・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・ ほんの七行、今の小学生のよむ英語読本の「蝶々はとびます」風の文句に、仰々しく一々何々論何々論、と四角い字を並べ、肩を張って読んだ人々の心持を考えると、漫に洋学が公然日本に入りかけた時代の、白熱した一般の読書慾、知識慾を思いやられる。・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・ 信濃教育会教育研究所が、小学生の行動について父兄が問題だと考える点を調査したら、「無作法」各学年を通じて七〇%、「根気がない」三年七六%、六年七三%、「理窟をこねるが実行力がない」各学年四二%そのほかだった。青少年の育ってゆく精神・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・モラトリアムによる学資の制限と住居、食糧、教育資材の欠乏は、小学生から大学生までをひっくるめた困難においている。各専門学校、大学などで学内自治の運動が起っているのは当然である。学生達は自分達の中から委員を選んで食糧の困難、宿舎の問題、資材難・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・腰にピストルをつけ、カウボーイと馬に騎り、小学生のときからひとの台処で働かねばならなかったアグネスの強壮な体の中を奔放に流れている熱い血がある。一方に子供時代の境遇からアグネスは母親にさえ自分の愛情というものを言葉に出して語る習慣がない。野・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
出典:青空文庫