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・・・ この遺書蝋燭の下にて認めおり候ところ、只今燃尽き候。最早新に燭火を点候にも及ばず、窓の雪明りにて、皺腹掻切候ほどの事は出来申すべく候。 万治元戊戌年十二月二日興津弥五右衛門華押 皆々様 この擬書は翁草に拠・・・
森鴎外
「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
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・・・その名の如く美しく咲くであろう。その尽きざる快楽の欣求を秘めた肺腑を持って咲くであろう。四騎手は血に濡れた武器を隠して笑うであろう。しかし我々は、彼らの手からその武器を奪う大いなる酒神の姿を何処で見たか。再び、彼らはその平和の殿堂で、その胎・・・
横光利一
「黙示のページ」