・・・ 夜烏子は山の手の町に居住している人たちが、意義なき体面に累わされ、虚名のために齷齪しているのに比して、裏長屋に棲息している貧民の生活が遥に廉潔で、また自由である事をよろこび、病余失意の一生をここに隠してしまったのである。或日一家を携え・・・ 永井荷風 「深川の散歩」
・・・以後向島居住の有志者は常に桜樹の培養を怠らず、時々これが補植をなし、永くこの堤上を以て都人観花の勝地たらしむべく、明治二十年に植桜之碑を建てて紀念となした。建碑について尽力した人の重なるものは、その時には既に世を去っていた成島柳北と今日なお・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・その要領は人類の居住すべき世界の土地は一定である、又その食料品は等差級数的に増加するだけである、然るに人口は等比級数的に多くなる。則ち人類の食料はだんだん不足になる。人類の食料と云えば蓋し動物植物鉱物の三種を出でない。そのうち鉱物では水と食・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・そして居住地域の産院、母子健康相談所が、若い母と子との健康のために助力します。これは、工場や官庁に働く婦人、女教師などに大体同じ事情です。婦人と職業、結婚、家庭生活の問題は、いまの日本ですべての若いまじめな女性の問題です。社会のために行われ・・・ 宮本百合子 「生きるための協力者」
・・・五千七十七万千九百九十七人という文盲者中実に、四千五百九十一万六百五十一人が農村居住者だった。 国内戦を経て、勇ましい階級的闘士をウンと出した婦人の基本的文化も一般的に云えば低かった。証拠に、全文盲人員の中、三千四百五十七万六千百二十八・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・山口県熊毛郡島田村居住。[自注8]島田の母様――顕治の実母、美代。[自注9]スエ子――百合子の妹。[自注10]山田のおばあちゃん――顕治の下宿の女主人。[自注11]達治さん――顕治の長弟。顕治に代って家事経営の中心になってい・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・〇八 一五九七 五八・〇パーセント 児童健康保護医員 六三・一パーセント この頃盛んに建つСССРの新住宅は多くの場合その中に、特に居住者の子供のための広場、室をわり出すこ・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・などによってこの数年来思想的放浪に置かれた知識階級の良心の支柱となり得るかのような作品の居住居を示して来たこの作家は、「生活の探求」に到って一つの転回を示した。これは、都会の大学に苦学的な学生生活を営んでいた駿介という主人公の青年が、都会の・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・が、体の弱いツルゲーネフはすっかり打撃をうけ、しかも居住制限によってその後何年か自分の領地スパツコイエに釘づけにされるという不法の拘束をうけたのであった。 やっと自由を恢復してから、ツルゲーネフはドイツやフランスへ遊学した。そして、再び・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・「白」が最後に潰滅する迄つきまとった。 フォルシュはそのはげしい革命の波にうたれながら、「ラビ」「居住者」など、彼女の代表作となったものを書いた。 シャギニャーンの『文学日記』『自分の運命』『ソヴェト・アルメニア』等が出版される。・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
出典:青空文庫