・・・彼の前には巡洋艦や駆逐艇が何隻も出入していた。それから新らしい潜航艇や水上飛行機も見えないことはなかった。しかしそれ等は××には果なさを感じさせるばかりだった。××は照ったり曇ったりする横須賀軍港を見渡したまま、じっと彼の運命を待ちつづけて・・・ 芥川竜之介 「三つの窓」
・・・ 二十九隻の巡洋艦、二十五隻の砲艦が、だんだんだんだん飛びあがりました。おしまいの二隻は、いっしょに出発しました。ここらがどうも烏の軍隊の不規律なところです。 烏の大尉は、杜のすぐ近くまで行って、左に曲がりました。 そのとき烏の・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
・・・一九一七年の十月二十五日払暁三時半にはこの河を巡洋艦「アウロラ」がさかのぼって来て、冬宮に砲口を向け碇泊した。それは輝かしい焔の記念だ。が、今ここには美しい寂寥がみち拡がっている。 室内にはやや色のさめた更紗張の椅子、同じ布張のテーブル・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・また栖方は梶に擦りよって来ると、突然声をひそめ、今まで抑えていたことを急に吐き出すように、「巡洋艦四隻と、駆逐艦四隻を沈めましたよ。光線をあてて、僕は時計をじっと計っていたら、四分間だった。たちまちでしたよ。」 あたりには誰もいなか・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫