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・・・椒江の支流で、始豊渓という川の左岸を迂回しつつ北へ進んで行く。初め陰っていた空がようよう晴れて、蒼白い日が岸の紅葉を照している。路で出合う老幼は、皆輿を避けてひざまずく。輿の中では閭がひどくいい心持ちになっている。牧民の職にいて賢者を礼する・・・
森鴎外
「寒山拾得」
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・・・石田は馬に蹄鉄を打たせに遣ったので、司令部から引掛に、紫川の左岸の狭い道を常磐橋の方へ歩いていると、戦役以来心安くしていた中野という男に逢った。中野の方から声を掛ける。「おい。今日は徒歩かい。」「うむ。鉄を打ちに遣ったのだ。君はどう・・・
森鴎外
「鶏」