・・・ 太い巻物を、一人のピオニェールに、セミョン・ニコラエヴィッチがわたした。 ――なに? なに? 見せて! ――どけよ。そんなに顔だしちゃ邪魔んなるよ。 それは、「若い観衆の劇場」教育部員が苦心して製作した、児童の心理統計とで・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ くつろいだ様子をして絵巻物を見て居た光君は、はばかるようにおもはゆげに誰にともなく云うと、わきに居た髪の美くしい年まがうけとって、「エエ、そうでございます、大奥様の御妹子の御子で御両親に御分れなさってからこちらに御出になって居るん・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・老 古い巻物と同じにさぞ、とぎれとぎれでござりましょうがのう。 私が貴方様を「和子」とお呼び申して居った時より尚ずんと前の事でござりまするのじゃから世の中は今とは不思議なほど変って居りましての、今よりずんとわかり易う世の中の事のす・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
出典:青空文庫