・・・――勝太郎が庭木戸から入って来たら、他の子供たちがついて来たので、「そんなところから来ちゃいけない」と云うと、中の一人がついたらしい。 Y、あわてて、助けだしたら、まがうかたなきブリの切身になって居る。人工呼吸は、どうやるのだか・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ 或る日いつもの様に庭木戸の方から入って来た彼は、縁側にドサリと腰を下すと持って来た杖がころがったのに耳もかさず、妙にソーケ立った様な顔をしてだまって溜息を吐いて暫くしてから、「余程弱ったものと見えて今日は来る道に目が廻って・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・と思いながら彼方此方歩いて居ると、じきに三十形恰の人のよさそうな巡査が庭木戸の方から入って来た。 家中の者は、此のたった一人の「おまわりさん」が家の者を気味悪がらせた泥棒の始末を付けて呉れるのかしらんと思いながら、ズラリと立ち並んで、第・・・ 宮本百合子 「盗難」
出典:青空文庫