・・・しかしこの原理の研究が何程進んでも、ニュートンの力学が廃滅に帰するという訳ではあるまい。日常普通の問題にこれを応用して少しも不都合はないはずである。精巧な測器が具備している今日でも、場合によって科学者が指や歩数をもって長さを測る事を恥としな・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・というこの文字が、もう何となく廃滅の気味を帯びさせる上に、もしこれを雑誌などに出したなら、定めし文芸即悪徳と思込んでいる老人たちが例の物議を起す事であろうと思うと、なお更に先生は嬉しくて堪らないのである。六 お妾のお化粧がす・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・その衰勢に及んではとても自家の地歩を維持するに足らず、廃滅の数すでに明なりといえども、なお万一の僥倖を期して屈することを為さず、実際に力尽きて然る後に斃るるはこれまた人情の然らしむるところにして、その趣を喩えていえば、父母の大病に回復の望な・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
出典:青空文庫