・・・大蔵省においては期せずして歳出を減じたることなれば、その金額をもってただちに帝室費を増加し、帝室はこの増額をもって学校保護の用にあてられたらば、さらに出納の実際に心配なくして事を弁ずること、はなはだ容易なるべし。ただに実際に心配なきのみなら・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・かつ学校の傍にその区内町会所の席を設け、町役人出張の場所となして、町用を弁ずるの傍に生徒の世話をも兼ぬるゆえ、いっそうの便利あるなり。 四所の中学校には、外国人を雇い、英仏日耳曼の語学を教えり。その法は東京・大坂に行わるるものと大同小異・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・ けだしこの一味、つまりは聖人の本意にも非ず、また後世の儒者にても、その本意に背くを知りてこれを弁ずる者ありといえども、いかんせん、世人の精神に感ずるところは、道徳の一品をもって身を立るの資本となし、無芸にても無能にても、これに頓着せざ・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・ 然りといえども、馬はなお、その物の毒性なるか良性なるかを弁ずるの能力を有す。然るに今の世の不学の徒は、汽車に乗りて汽の理をしらず、電信を用いて電気の性質を知らず、はなはだしきは自身の何物たるを知らずして、摂生の法を誤る者あり。なおはな・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・ 西洋事情や輿地誌略の盛んに行われていた時代に人となって、翻訳書で当用を弁ずることが出来、華族仲間で口が利かれる程度に、自分を養成しただけの子爵は、精神上の事には、朱子の註に拠って論語を講釈するのを聞いたより外、なんの智識もないのだが、・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫