・・・ひっきょう、経世は活学にして、当局者が局にあたりて後の練磨なり、決して学校より生ずるものに非ずとして安心せんと欲するも、ここに安心すべからざるものあり。すなわち人生奇異を好むの性情にして、たとい少年を徳学に養い理学に育して、あたかもこれを筐・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
・・・結婚は生涯の一大事にして、其法、西洋諸国にては当局の男女相見て相択び、互に往来し互に親しみ、いよ/\決心して然る後父母に告げ、其同意を得て婚式を行うと言う。然るに日本に於ては趣を異にし、男子女子の為めに配偶者を求むるは父母の責任にして、其男・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ およそ古今世界に親子不和といい兄弟姉妹相争うというが如き不祥の沙汰少なからずして、当局者の罪に相違はなけれども、一歩を進めて事の原因を尋ぬれば、その父母たる者が夫婦の関係を等閑にしたるにあり。なお進んで吟味を遠くすれば、その父母の父母・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・教育当局が、若い女性に堅実な実務教育を希望しているのは事実であろうが、あながち十文字女史の方法を必ずしもよしとはしないのではあるまいか。 女学生の工場への動員は大阪でも行われている。二つの女学校の五年生が、このせつのしきたりにしたがって・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・一九三〇年の今日、朝鮮銀行の金棒入りの窓の中には、ソヴェト当局によって封印された金庫がある。〔一九三一年一、二月〕 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・たちは、当局のそのおどかしをなにかの楯として、自分たちと旧プロレタリア文学運動に属していた人々との間に越えがたい一線があるかのように行動した。この方法は誰のためにもならなかった。というのは、当時文学者として自分ぐらいの者になっているものはい・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 一カ月ばかり前のことでしたが、上野高女の生徒が、学校当局と意見の衝突をしたことがありました。学業もすてて耕作した作物を、先生が独占したことに対する不満が原因であったと記憶します。新聞の記事だけでは、双方の事実が十分に明らかにされてはい・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・ベルリン当局はパリのマルクスという人物が気にかかってたまらなくなって来た。この時、ドイツの有名な自然科学者アレキサンダー・フォン・フンボルトは学者であったにもかかわらず、当時のプロシヤ外相の親戚であるということから、全く恥ずべき役を買って出・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・学校当局はあわてて生徒たちに謝らせようとした。 けれども、生徒たちは、皆で軍法会議にまわされるならば、それは仕方がない。軍法会議の席で、初めに乱暴をしたのは誰であるかということを明かにして、裁判して貰う意見にまとまった。そして、その意見・・・ 宮本百合子 「結集」
・・・「先ずお国柄だから、当局が巧に柁を取って行けば、殖えずに済むだろう。しかし遣りようでは、激成するというような傾きを生じ兼ねない。その候補者はどんな人間かと云うと、あらゆる不遇な人間だね。先年壮士になったような人間だね。」 茶を飲んで・・・ 森鴎外 「食堂」
出典:青空文庫