・・・されば御家相続の子無くして、御内、外様の面、色諫め申しける。」なるほどこういう状態では、当人は宜いが、周囲の者は畏れたろう。その冷い、しゃちこばった顔付が見えるようだ。 で、諸大名ら人の執成しで、将軍義澄の叔母の縁づいている太政大臣九条・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・ 同日、摂政宮殿下からは、救護用として御内ど金一千万円をお下しになりました。食料品は鉄道なぞによっても、どんどん各地方からはこばれて来たので、市民のための食物はありあまるほどになりました。 赤さびの鉄片や、まっ黒こげの灰土のみのぼう・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・あんまりわがままばかりなさると、私が御内所で叱られますよ」「ふん。お前さんがお叱られじゃお気の毒だね。吉里がこうこうだッて、お神さんに何とでも訴けておくれ」 白字で小万と書いた黒塗りの札を掛けてある室の前に吉里は歩を止めた。「善・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
出典:青空文庫