・・・まった。 こうして、下界との一切の交通を絶ってしまった佐助は、冬眠中の蛇を掘り出して卑怯の術ではない。めったなことに卑怯はならぬ。まった忍術とは……」「忍術とは……?」 すかさず訊くと、戸沢図書虎先生は雲の上でそわそわとされ・・・ 織田作之助 「猿飛佐助」
・・・逃げ道のために蝦蟇の術をつかうなんていう、忍術のようなことは私には出来ません。進み進んで、出来る、出来ない、成就不成就の紙一重の危い境に臨んで奮うのが芸術では無いでしょうか。」「そりゃそういえば確にそうだが、忍術だって入用のものだから世・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
・・・先ず魔法、それから妖術、幻術、げほう、狐つかい、飯綱の法、荼吉尼の法、忍術、合気の術、キリシタンバテレンの法、口寄せ、識神をつかう。大概はこれらである。 これらの中、キリシタンの法は、少しは奇異を見せたものかも知らぬが、今からいえば理解・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・ 深谷は、寄宿舎に属する松林の間を、忍術使いででもあるように、フワフワとしかも早く飛んでいた。 やがて、代々木の練兵場ほども広いグラウンドに出た。 これには安岡は困った。グラウンドには眼をさえぎる何物もない。曇っていて今にも降り・・・ 葉山嘉樹 「死屍を食う男」
出典:青空文庫