・・・プロレタリア文学の仕事ではその誕生の時代から活動していた林氏は、出獄後、一つの大きい文壇的ァキウムとなって、内外の事情の錯綜と微妙な日常感情、作家的志望の感情にからんでよりどころを見失ったような状態にあった旧プロレタリア作家を吸いあつめ、文・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・一九四七年、豊原市に二十人位の文学志望者があって、新聞『新生命』を中心に樺太文学協会をつくろうということになった。第一回会合が新生命社でもたれ、「サガレン文学」を出すことにきめたが、新聞社主筆ミシャロフ少佐が、それを禁じた。理由をきくと次の・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・ 多くの男の作家志望者の中に間々あるように出世の近路をあがき求めて千鶴子が×さんや×氏に出入りした。それは明らかであったが、彼女が内心に強い芸術上の競争心を含んでいるらしいのがはる子の興味を牽きつけた。千鶴子の書いたもので読んだのは・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
・・・ 母のとりなし、特に妹のロオルの支持で、バルザックの作家志望は遂にきき届けられた。然し、それには一つ妙な、父親の地方人らしい、実利的な条件がついた。二年間だけ好きにさせてやるから、その間にものになれと云うのである。 喜び勇んだバルザ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・今日の社会で貧しい妻になり母となって経験した現実は一層彼女を社会性に目醒めさせ、彼女を先ず作家志望者たらしめたその積極性によって、その婦人作家は次第にはっきりと自身の文学が社会のどこに属すものであるかを理解しはじめ、作家としての実践が一定の・・・ 宮本百合子 「夫婦が作家である場合」
・・・ 結果的には、写される人々のカメラへの全然の無頓着、冷淡さも画面としてはやはり或る面白さをもたらすだろうけれども、文化映画の本来の志望が、制作のための制作でないことを考えれば、永い将来のうちに、人々がいろんな場面で、自分たちの表現手段と・・・ 宮本百合子 「「保姆」の印象」
・・・ 図書館に勤めるようになった一人の若い作家志望の女が、その一見知識的らしい職業が、内実は無味乾燥で全く機械的な資本主義社会の経営事務であることを経験し、そこの官僚的運転の中で数多い若い男女の人間が血の気を失い、精神の弾力を失ってゆくのを・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・ゴーリキイが若い労働者の文学志望者に与える言葉の中に「私はロマンティシズムを支持する、しかし、ロマンティシズムに対して極めて本質的な条件つきのもとに」という意味のことをいっているのは以上の消息を語るものであると思う。 また、なぜ彼が小説・・・ 宮本百合子 「私の会ったゴーリキイ」
・・・あの男が少壮にして鉅万の富を譲り受けた時、どう云う志望を懐いていたか、どう云う活動を試みたか、それは僕に語る人がなかった。しかし彼が芸人附合を盛んにし出して、今紀文と云われるようになってから、もう余程の年月が立っている。察するに飾磨屋は僕の・・・ 森鴎外 「百物語」
出典:青空文庫