・・・アンネットは婚約の青年をもっていたのであるが、彼女は従来の仕来りどおりの結婚生活の中で二つの人間的な要素、個性的な特色が互に減殺しあうこと、愛情が見せかけの仕草や慣習の一つに堕すことなどを嫌って、通常の結婚生活に入ることを拒む。けれども、ア・・・ 宮本百合子 「未開の花」
・・・仕方がないから当分親たちと同居ということになったとき、民法が夫と妻とを単位とするからといって、若い妻に、嫁の慣習がおいかぶさって来ないと、どうしていえよう。夫婦で働いて生活してゆかなければならないものには、妻の家事の負担が、夫にとっても重大・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・恋愛を夫婦愛の中核として見て、その発展と成熟との間におこる種々の問題こそ研究さるべきであるという常識は、日本の、現在でもなお結婚と恋愛とを切りはなして考える慣習と対蹠をなしている。 昔の日本人は、封建の柵にはばまれて、心に思う人と、親の・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫