・・・特務曹長「これはどの戦役でご受領なされたのでありますか。」大将「印度戦争だ。」特務曹長「このまん中の青い所はほんもののザラメでありますか。」大将「ほんとうのザラメとも。」特務曹長「実に立派であります。」(曹長に渡す。曹長・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・この戦役におけるイギリス負傷兵の状況の酸鼻が、しばしば議会の問題となり、世界の注目がそこにあつめられた。この時代まだ笞刑の行われていたイギリス陸軍の兵士が、クリミヤ戦争で傷つき、運ばれてゆくスクータリーの陸軍病院という名は、有識の人々の間に・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・しかも明治二十七八年、三十七、八年戦役という歴史的な時期を、若い女性の発展期に経験しているので、いわば明治から大正、昭和にかけての日本の文化の進歩的な面とそれと矛盾する古い反動的な面とを一身にそなえていたのでした。生活力が盛んでいわゆる日本・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
・・・石田は馬に蹄鉄を打たせに遣ったので、司令部から引掛に、紫川の左岸の狭い道を常磐橋の方へ歩いていると、戦役以来心安くしていた中野という男に逢った。中野の方から声を掛ける。「おい。今日は徒歩かい。」「うむ。鉄を打ちに遣ったのだ。君はどう・・・ 森鴎外 「鶏」
出典:青空文庫