・・・こうと知ったら、定めし白髪を引ひきむしって、頭を壁へ打付けて、おれを産んだ日を悪日と咒って、人の子を苦しめに、戦争なんぞを発明した此世界をさぞ罵る事たろうなア! だが、母もマリヤもおれがこうもがきじにに死ぬことを風の便にも知ろうようがな・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・麦の畑でない処には、蚕豆、さや豌豆、午蒡の樹になったものに、丸い棘のある実が生って居るのを、前に歩いて行った友に、人知れず採って打付けて遣ったり何かすると、友は振返って、それと知って、負けぬ気になって、暫く互に打付けこをするのも一興である。・・・ 田山花袋 「新茶のかおり」
・・・唯都々一は三味線に撥を打付けてコリャサイなど囃立つるが故に野鄙に聞ゆれども、三十一文字も三味線に合してコリャサイの調子に唄えば矢張り野鄙なる可し。古歌必ずしも崇拝するに足らず。都々一も然り。長唄、清元も然り。都て是れ坊主の読むお経の文句を聞・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫