・・・困難し、打ち合わせなどするうちに、後の廊下で、一人の老人が丹念に人造真珠の頸飾や、古本や鼈甲細工等下手に見栄えなく並べ始めた。 一眠りしたら、大分元気が恢復した。福島屋の其部屋から、遙に港内が瞰下せた。塗り更えに碇泊して居るらしい大・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・ この二つの論文は、執筆に当ってあらかじめ打合わせがされたのかどうかはもとより知らないが、思惟の傾向の本質では全く一体二面であるし、或る意味の組織的生産の印象を与えている。二人の筆者は、マルクスが「経済学批判序説」の終りで云っている文化・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・譲原さんは、やっと汗のおさまった顔をして、今度は放送の日までに一遍わたしのところへ来て、打合せをしておこうという話になった。 うちへ来てくれた日は、寒い日だったけれども、譲原さんはやっぱり小鼻に汗を出していた。その時もわたしは、譲原さん・・・ 宮本百合子 「譲原昌子さんについて」
・・・手紙で打ち合わせをして東京から客を呼ぶ、というだけの余裕はなかった。老人は、夏が旱魃であればその秋の紅葉は出来がよい、と言ったが、それは必ずしも当たらなかった。たぶん、気候の条件がそろっている上に、その年の霜の降り具合が仕上げをするのであろ・・・ 和辻哲郎 「京の四季」
出典:青空文庫