・・・だから、その作品が拒否せられたら、それっきりだ。一言も無い。 私は、私の作品を、ほめてくれた人の前では極度に矮小になる。その人を、だましているような気がするのだ。反対に、私の作品に、悪罵を投げる人を、例外なく軽蔑する。何を言ってやが・・・ 太宰治 「自作を語る」
・・・ けれども私は、そんな作家たちを、決して拒否できないのです。 私だって、薬を飲むときには、まず、その薬品に添附されて在る効能書を、たんねんに読んで、英語で書かれて在るところまであやしげな語学でもって読破して、それから、快心の微笑を浮べて・・・ 太宰治 「正直ノオト」
・・・河内さんから御返事が来て、それは結局、借銭拒否のお手紙であったが、けれども、拒否されても、私は河内さんを有難いと思った。私のような謂わば一介の貧書生に、河内さんのお家の事情を全部、率直に打ち明けて下され、このような状態であるから、とても君の・・・ 太宰治 「善蔵を思う」
・・・一、白蘭の和平調停を、英仏婉曲に拒否す。 そもそもベルギイ皇帝レオポオル三世は、そのあとは、けさの新聞を読んで下さい。二、廃船は意外わが贈物、浮ぶ『西太后の船。』 そもそも北京郊外万寿山々麓の昆明湖、その湖の西北隅、意外や竜・・・ 太宰治 「俗天使」
・・・とおかみさんは強気のひとらしく、甲高い声で拒否し、「売り物じゃないんだ。とおしてくれよ、歩かれないじゃないか!」人波をかきわけて、まっすぐに私のところへ来て私のとなりに坐り込みました。この時の、私の気持は、妙なものでした。私は自分を、女の心・・・ 太宰治 「たずねびと」
・・・自分に必要なものを選択して摂取し、不用なもの有害なものを拒否し排出するのが、人間のみならずあらゆる生物の本性だということは二千年前のストア哲学者が既に宣言していることである。生物が無生物とちがうのもこの点においてである。 これも近頃聞い・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・その指令三百十一号には、突発事故が起きたらできるだけ復旧事務を拒否せよ、民同との摩擦を回避せよ、などという文句があったそうです。北海道に偽の指令が流れたことがあった。この指令もおそらくどこかの家宅捜索をすれば、「そこにもあった」ものとして発・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・本年の一月頃から日本文学の動きは『文学界』を中心に、文学における科学的客観的評価の否定、合理的な世界観の拒否の声が一層高まり、昨今はこのグループによって変種の実証主義、信仰的体験への要求が提出されている。文化における極端な民族尊重の傾向と結・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ 修身科をおくかおかないかも論議まちまちで、修身がほしいと考える人々でさえも、教育勅語的修身を拒否したのは、こんにちの日本として当然であった。子供のために修身を、と考える親の心には、きょうの世相をかえりみて、子供の未来、日本の将来に、人・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・日本だけが、戦争を拒否しているのではなくて、世界各国数十億の人民が平和をもとめている、という重大な現実を作者は忘れている。国際平和会議と各国の平和を守る会は、日本にも連繋をもっている。原子兵器反対のアッピールは、世界の人民の良心にとって現実・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
出典:青空文庫