・・・ 今ソヴェト同盟で出ている、あらゆる漫画諷刺雑誌の主題は、資本主義国支配階級への攻撃、国内のブルジョア残存物への挑戦、次にプロレタリア生産、文化の自己批判が、扱われている。 然し実際にやって見ると、階級的自己批判としての諷刺文学は、・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・十八世紀のイギリスで、当時の上・中流社会人のしかつめらしい紳士淑女気質への嘲笑、旧き権威とその偽善への挑戦として、スウィフトの「ガリバア旅行記」が書かれた。その国で、諷刺文学がどんな形式と内容とをもって発展してきているかということは、意味ふ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ ある作家、編輯者はこの作に対して公に龍胆寺に挑戦をしたり、雑誌の六号記事はどれもそれにふれる有様であったが、この作品は、文壇清掃の初歩的な爆弾的効果をもはたさず、いわば作者一人の損になってしまった形で終った。 ブルジョア文壇への登・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・素朴なもの、具体的なもの、日常的なものつまり勤労者的なものに対する挑戦は、文壇ですでにおこっている」と徳永直が書いたことには、次のような当時の事情もあったと思う。 一九四七年は、一方でサークル活動がたかまり、「町工場」その他労働者によっ・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・ アグネスは、アーネストと分れて後、成熟した一人の女として、性的な衝動を恥じる偽善に反撥を感じてからは、「この羞恥心に挑戦して立ち上って」「行為によって反抗した。」何人かの男と友愛から進んで同棲し、そして何人かのそれらの男のもとから去っ・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・無智は不明は、敵意の無い挑戦者である。 魂の深みを顧みて見ると、そういう風な悔恨を沁々と味わずには居られない。 此は決して郷愁がさせる業でもなければ、感傷主義の私生児でもない。其は確だ。一つでも、その半片でも、人間が受けている、或は・・・ 宮本百合子 「追慕」
・・・前時代の古典主義に対して彼はこう挑戦した。「芸術の使命は自然を模写することではない。自然を表現することだ!」「我々は事物の精神を、魂を特徴を掴えなくてはならない。」芸術家は「自然が真裸になってその神髄を示すのやむなきにいたるまでは根気よく持・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・それにもかかわらず、彼にはその挑戦的な鋭い言葉が気に入った。それらの云われていることは「容易に簡単に、説得的な思想に編みこまれて行く。」ところが、突然読みての声が遮られ、暗い朦朧たる部屋の中は憤怒の声に満たされた。「裏切者!」「ガア・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ 御者は同じ様に挑戦的に応じた。 ――行こう! 御者がさとらぬようにそっと口をあけて、日本女は何とも云えないおかしさでひとり笑った。だって、一体これを何と解釈すべきだろう。日本女をのっけた馬車は、今七時二十分、人の出盛っているト・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
出典:青空文庫