・・・ちょうど自分が観測室内にいた時に起こった地鳴りの際には、磁力計の頂上に付いている管が共鳴してその頭が少なくも数ミリほど振動するのを明らかに認める事ができたし、また山中で聞いた時は立っている靴の底に明らかにきわめて短週期の震動を感じた。これだ・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・ いったい地球の雰囲気が太陽のために週期的にあたためられるために雰囲気全体の振動が起こり、それが一面には気圧の週期的変化となり、また一面には地球上至るところの風の週期的変化として現われるはずである。たとえば地球が全部大洋かあるいは陸地に・・・ 寺田寅彦 「海陸風と夕なぎ」
・・・そうしてすべての人達が屋外へ飛び出してしまった後に一人残って飲み残りの紅茶をなめながら振動の経過を出来るだけ詳細に観察しようと努力していた。あとでこの事を友人に話したら腰が抜けて逃げられなくなったんじゃないかといって笑われたくらいであった。・・・ 寺田寅彦 「家庭の人へ」
・・・分子だけの厚さをもつものであるから、割れ目の間隙が 10-8 でなくてもミクロン程度のものならば、その間隙を液体で充填することによって割れ目の面における音波の反射をかなりまで防止し従って鐘の正常な定常振動を回復することができるであろうと考え・・・ 寺田寅彦 「鐘に釁る」
・・・ われわれの言語を言語として識別させるに必要な要素としての母音や子音の差別目標となるものは、主として振動数の著しく大きい倍音、あるいは基音とはほとんど無関係ないわゆる形成音のようなものである。それで考え方によっては、それらの音をそれぞれ・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・特別な設計をした振動台の上に固定された椅子に被試験者を腰掛けさせ、そうしてその台にある一定週期の振動を与えながらその振幅をいろいろに増減する。そうしてちょうど振動感覚の限界に相当する振幅を測定する。次には週期を変えて、また同じ事をする。そう・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・また陸上では起らぬようなタービンの故障が舶用タービンでしばしば起るのはタービン・ディスクの廻転に船の動揺が作用するためのジャイロスコピック・アクションに起因する盤の振動によるものであろうということに着目して、この不可解の問題を解決した。これ・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・すると、つり橋がぐらぐら揺れだしたのに驚いて生徒が騒ぎ立てたので、振動がますますはげしくなり、そのためにつり橋の鋼索が断たれて、橋は生徒を載せたまま渓流に墜落し、無残にもおおぜいの死傷者を出したという記事が新聞に出た。これに対する世評も区々・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ある時はまたXの方向に振動する偏光を見ている一派と、Yの方向に振動する偏光を見ている他の一派とがけんかをする。言う事が直角だけちがう。しかし、ちょっとニコルを回してみれば敵の言いぶんは了解されよう。かたよらぬ自然光で照らせば妙なブラッシの幽・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・正と負の両極の間に振動している。「善行日」ばかりを奨励するのも考え物ではあるまいか。少なくとも「悪行日」をこれと並行錯雑させて設けてみるのも一つの案ではあるまいか。昔の為政家は実際そういう事をしたもののように見える。 しかし私のこの・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
出典:青空文庫