・・・中で、今日やかましい大衆の問題を正当に理解し表現して行くこと、芸術に於ける民族的な特徴を広い偏見のない目で現実の中に見極めて形象化してゆくこと、及び芸術作品に描かれる人間性というものに就いての統一的な掘り下げ等を通じて、新しき時代に役立つヒ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・その一ねじりは作者にとってそれから後をプラン通りに運ぶ便宜上役立ってはいたが、あるがままの現実に面してそれを掘り下げて行こうというには、主題が現実の多難性の前で捩れて、裏がえしとなって、読者の心が求めているものとは背中合わせな本質となってい・・・ 宮本百合子 「生産文学の問題」
・・・ その一つの原因は、婦人作家の擡頭ということにつれて、諸家の見解がのべられているのに、何となく十分現実を掘り下げていない感銘を受けたからでもある。 婦人作家がこの一年に比較的数多い作品を発表もしたのは一般に高まった文学性への要求と婦・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・それが作品の世界に生きる人々の心の問題としても深く掘り下げられ追求され展開して行ったときに、読者はその作品をよむことによって勇気を与えられ、なぐさめられ、豊かにされ、自分の経験を再びかみなおし、階級者として成熟してゆくモメントとなります。・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ すべてのもののうちに潜んでいる真当、掘り下げて、掘り下げて行った底には、きっと光っているに違いない真当に、強い憧れを感じて、禰宜様宮田のあの子供らしい、上品な眼は涙ぐんだのである。 貧乏な暮しには、いい魂より金の方が大切だ。 ・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・と驚くことから掘下げてゆくべきであり、原因は単に昔の文化主義的なものの観方にあるのではないというあなたの意見について、私はこう思います。当時の歴史の若さ、全体として経験の未熟さこそが、貴方の云われる「あんな男」を、一応は指導者めいた位置にも・・・ 宮本百合子 「不必要な誠実論」
出典:青空文庫