・・・ 掘出し物という言葉は元来が忌わしい言葉で、最初は土中冢中などから掘出した物ということに違いない。悪い奴が棒一本か鍬一挺で、墓など掘って結構なものを得る、それが既ち掘出物で、怪しからぬ次第だ。伐墓という語は支那には古い言葉で、昔から無法・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・そういうわけであるから現代の読者にはあまりに平凡な尋常茶飯事でも、半世紀後の好事家には意外な掘り出し物の種を蔵しているかもしれない。明治時代の「風俗画報」がわれわれに無限の資料を与え感興をそそるのもそのためであろう。ただし、そういう役に立つ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・で古色蒼然としていて実に安い掘出し物だ。しかし為替が来なくっては本も買えん、少々閉口するな、そのうち来るだろうから心配する事も入るまい、……ゴンゴンゴンそら鳴った。第一の銅鑼だ、これから起きて仕度をすると第二の「ゴング」が鳴る。そこでノソノ・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
出典:青空文庫