・・・ それには、やはり作家が、文学の領野の内でのあれからこれへの探索から、もっとじかに人生を素朴に浴びなければならず、生活そのものでむかれ新にもされてゆかねばなるまい。 現実にじかにぶつかれ、と云う声もあるとき、こういうのは愚劣な重複の・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・ 生れてこのかた、今日まで泥棒と云うものに入られた事のなかった私は、此那ことをして一々探索してあるく事が此上なく、面白かった。 命に別状さえなく、彼那嫌な風付きにさえならないですむなら、たまには探偵も面白いだろうなどと思われた。・・・ 宮本百合子 「盗難」
・・・ 現代の社会では殆ど国際的に何故このように所謂純情が探索され、憧憬され、しかもその純情なるものが社会発展の歴史から見た場合、消極的な意味を多くもつ形態で発露されたときにだけ、様々の感歎の的になるのであろうか。疑問というのはそのことなので・・・ 宮本百合子 「私も一人の女として」
・・・あなたが誰と知合になられたとか、誰と芝居へおいでになったとか云うことを、わたくしは一しょう懸命になって探索したのです。あのころ御亭主は用事があってロンドンへ往っておいでになると云うことでしたから。 女。ええ。あの時のあなたの御様子は、ま・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「最終の午後」
・・・新王はただ一人で妃の探索に出かけ、妃の夢の告げによって山中で妃の白骨と十二歳になった王子とを見いだすのである。そこで不老上人に乞うて妃を元の姿に行ないかえしてもらうということが、話の本筋にはいってくる。妃の蘇りにとって障げとなったのは、妃の・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫