・・・ゆえに我が輩は今の世態に満足する者に非ず、少年子弟の不遜軽躁なるを見て、これを賛誉する者に非ずといえども、その局部について直接に改良を求めず、天下の公議輿論にしたがいてこれを導き、自然にその行くところに行かしめ、その止まるところに止まらしめ・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・故に今後は、我輩の筆力のあらん限り、読者と共にこの消防法に従事して、先ず婦人の居を安からしめ、漸くその改良に着手せんと欲するものなり。 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・そんなら今が幸福だと満足して、此上に社会改良も何も不必要かと云うに然うでもない、大変パラドクサルになって了って……ある意味じゃ此儘幸福だが、他の意味じゃ不幸福だ。一見矛盾しているようだが私の心では為て居らん。ここが象徴派と同じ所へ来ている証・・・ 二葉亭四迷 「私は懐疑派だ」
・・・大河内氏は、日本の女子の天才の一つとしてそれを感歎し、それは改良されている機械の機構と、「その使いかたが単調無味であるように製作されてあるほど精密に加工されるから」「飽きることを知らない農村の女子が農業精神で」その精密加工に成功し「農村の子・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・現代社会の発展は生産のもっと合理的な方法によるしかなく、進歩のにない手は世界の勤労階級であることを理解しはじめていたカールは、「プロシヤ国王と社会改良」というような論文で盛にドイツの野蛮と闘った。ベルリン当局はパリのマルクスという人物が気に・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・そして、ある年月の後、今日の若い父親たちよりはいささかその常識の内容をひろやかに多様なものとしたより若い母たちが、自分たちの可愛い小さい娘や息子へのおくりものとして、これらのリストの改良された見出しの中から書籍を選ぶ時があるとしたら、愉しい・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 日露戦争がすんだころ、東京で元禄模様、元禄袖などと一緒に改良服というものが大流行した。歴史のありのままの表現で語れば、日本のおくれた資本主義は、日清戦争から十年後に経たこの侵略戦争で再び中国の国土を血ぬらし殖民地化しながらその興隆・・・ 宮本百合子 「菊人形」
・・・その金銭の害悪は、金銭の乏しい彼に金をつかわないで楽しく暮せる生活法の発見――イギリスの社会改良家の伝統的な幻想である素朴な自給自足生活へのあこがれ――をうけつがせた。ローレンスは、生活の現実におそいかかって来る果しない矛盾、恐怖、解決の見・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・漁家の収入と云えば、不規則なものときまっているらしいが、現在では一般にどんな改良が加えられているのだろうか。 自分たちは直接海へのり出して行かないで、その結果だけ待っていて家計をやりくってゆく漁村の女の暮しが楽でないことは、大正八年に米・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・また自分を改良し訂正しようとしているのでもない。今の自分の能力に不満であるとともに、伸びようとしている自分の力をいかにもして生い育てようというのである。そのためには、我を破壊することが何よりもまず必要なのである。特に自分のようなものにとって・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫