・・・が、一九三六年の当時に及んで、日本古典の問題は、芸術における伝統の享受、発展への要求の範囲を脱し、一種教化統制の風潮を著しくして来た。これを無条件に礼讚せざるものは、健全な日本文化人に非ずという強面をもって万葉文学、王朝文学、岡倉天心の業績・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・に描かれているものとは全く対蹠的な社会的事情――感化院の教師と少年らの関係の内容の緊密さ、愛情、教化の方法すべてを貫いて温く流れている社会人としての共同感情が、単純にそれゆえ一層感動的に描かれているのである。 主人公となっている労働者の・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・ ただ、ジャンが機械工になりたくて仕方がなく、その方面では技術をさずけられ自信ももっているのに、教化所が一つの慣例のように農家へばかり委托する為に、ジャンの生活が破綻してゆく点を、私は心から哀れに思う。 アブデェンコの小説「私は愛す・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・ 国民文学という声の中には、嘗て民衆の文学を唱えたとき、自身たちの文学的要素の歴史的な吟味に向うよりも、民衆と文学との関係では文学を外からの教化資料とし扱おうとした考えに結びついて行った文学放棄の態度も自然の成りゆきとして加わっているわ・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・――この民衆教化が第二の任務である。 しかし現在露国の一部労働者が芸術を虐待したからといって、それで戦後の芸術を推しはかるのは少し無理だと思う。一般的に言って教養ある民衆の方が官僚政治家や金持ちなどよりもよりよく芸術を解するのである。・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫